前回、新商品「CRYSTAL AQUA」の魅力を紹介しましたが、今回はその第2段として、3D CADを使ってどういう風にデザインや設計を行っていたのかをご紹介します。
もともと、英語の「デザイン」と日本語の「設計」は同じ意味ではありますが、現在では「設計」は工程や成形、生産技術の意味として使われ、もともとの設計の意味は、完全に「デザイン」という言葉に代わりました。
「デザイン」から実際に製品を作る「量産」に進むには必ず「設計」がその橋渡しのように必要となります。
「量産」するためには「設計」の製造条件を満たさないとなりませんし、「デザイン」もまた「設計」の条件を満たさないと製造することができません。
そのため、この3つはお互いに依存、促進、協力の関係になっています。(図1)
さてここからは実際に「CRYSTAL AQUA」の設計についてご紹介していきます。
本製品は、図2のように、Bi-Layer(バイレイヤー)構造という2つの異なる素材で作られたパーツで構成されています。
この構造にした理由は大きく2つあります。
1つ目は、透明な部分を通し、まるで液体が封入されているかのようなデザインを実現するため。2つ目はケースの耐衝撃性を高めるため。
この両方を得るためにはバイレイヤー構造がベストな構造だと考えました。(図2)
この構造としては、アウターパーツには透明度が高く柔らかいTPU素材を採用し、インナーパーツには硬くしっかりと端末を保護できるようにPC素材を採用しました。
そして下記の断面図にあるように、外側のTPU素材で4つの角を厚くすることでCRYSTAL AQUAの耐衝撃性を高めているのが分かると思います。(図3)
今の時代、スマートフォンのカメラ機能はなくてはならない基本機能になっています。
その技術の進化に伴い、スマートフォンケースのカメラ周りの設計もますます要求が厳しくなってきました。
特に、最新のiPhone 11 Proは超広角レンズが搭載されているため、撮影できる範囲が広がり、カメラレンズやフラッシュギリギリに合わせてしまうと、反射やケースが写り込んでしまう可能性があります。
それを防ぐために、3D CADを利用し、事前にデータ上で、その画角やフラッシュの範囲などを検証し設計します。その3Dデータをもとに試作することで、こういった不具合が起きないようにしています。(図4)
サイレントスイッチは、ボタンを押すような操作方法ではなくON/OFFに切り替える操作となるため、ケースの同じ位置に穴をあける必要があります。
これまでの経験を活かし、穴をただ単に大きくするのか、面取りしてみるのかなど操作ができるようになるまで、いくつものパターンを検証しました。
皆さんの中には、普通に考えるとなぜ穴を大きくしていないとならないのか、もっとピッタリな方が綺麗なのにと思う方もいるかもしれませんが、実際はデザインを維持しつつ、ユーザーの皆さんが使いやすいような形を保つためなのです。(図5)
先ほどのサイレントスイッチ周りの設計を紹介しましたが、面取りを付けることにより、図の1と2の隙間が均一ではなくなりました。見栄えにはほとんど影響がなく、もちろん使用するうえでも支障はありません。
実際にはほとんど見えないぐらいの差しかないのですが、プロダクトデザイナーとしては、これを見過ごすわけにはいかず、それを直すためにデータの修正にまる一日掛けた覚えがあります。
なぜそこまでこだわる必要があるのと思うかもしれませんが、私としては力を注いだ製品を完璧にして皆さんにお届けしたいと思ういわゆる職人気質があるからです。そして、私が皆さんと同じユーザーの立場に立った時、せっかくであれば満足する製品を使いたいなと思うからです。
今回『CRYSTAL AQUA』の設計についてちょっとだけご紹介しましたが、実は開発段階でいろんな壁や困難があり、一時は諦めたい気持ちも出たことがありましたが、最終的にはその壁や困難を全て乗り越え、素晴らしいと言える製品を作ることが出来ました。 この設計についての話はまだまだありますので、また次回ご紹介していきたいと思います。