「自分たちでビジネスを立ち上げてみるか?」
2010年12月下旬、台北から成田へ向かう機内で、ひと回り以上若い同僚エンジニアに問いかけました。
その頃スマートフォン市場は黎明期で、我々はスマートフォンに欠かせない画期的なコーティング技術の開発プロジェクトの受注に邁進していました。
私自身はエンジニアではありませんが、商社マンとして電子部品・半導体製造装置メーカーの販売代理をしていた若い頃から、通訳になるだけでは顧客へのプレゼンスが上がらず面白くない為、メーカーの技術営業のように技術やモノづくりを割と勉強していました。
一般的には営業マンが技術開発に関わることはほとんどありませんが、私は開発にも関わりたいタイプでしたので、その時もAppleやSAMSUNGに部品を供給している台湾の大手メーカーの工場に入り、文字通り朝から深夜までエンジニアと共に必死にコーティング技術を開発していました。
それは、2週間の滞在でようやく顧客に納得してもらえる成果が出て、プロジェクトの受注に手応えを感じながら帰国する時の事でした。
私は、そのプロジェクト(スマートフォンのコーティング技術開発)に携わる事で、スマートフォン市場の将来性を認識し、かつ、スマートフォンサプライチェーンの有力企業と仕事をすることで、スマートフォン市場をすごく身近に感じるようになっていました。
「自分たちでビジネスを立ち上げてみるか?」 その時は「恐る恐る」口に出してみたものの「そうは言っても実現は難しいだろう」とか「自分にそんな勇気があるのか?」という、半信半疑、夢物語を語っているような、そんなふわっとした状態だったと思います。しかし、スマートフォン関連であれば様々なビジネスチャンスがあるという漠然とした確信はありました。
まだ大学を出て数年の若いエンジニアは「出来るならやりたいですねぇ〜」という前向きな反応だったと記憶していますが、おそらく彼にとってもその時は「遠い夢物語」だったと思います。
口に出したら行動を起こさずにいられない性格の私は、帰国後、自分のアイデアを周りのビジネスパートナーなどに話し始め、コトを進め始めました。